記:山下太郎(1985年入学)

 12月7日(日)、王子スタジアムで開催された1-2部入替戦は、京大が52-0で追手門学院大(2部B、1位)に完封勝利して1部残留を決めた。

 前半レシーブを選択した京大は、自陣38ydsからの攻撃。ショットガン隊形からのRB#35田嶋寛介のランプレーは45ydsのロングゲイン。一気に敵陣深くに攻め込んだ。敵陣23ydsからの攻撃もランプレーのみで前進するが、4thDown 8ydsとなりFGトライ。45ydsの距離は、K#85大塚健一としては射程内。しかし、力強く蹴った球は惜しくもゴールポストを直撃して得点ならず。

 嫌なムードを断ち切ったのは守備陣。追手門大はウイッシュボーン隊形からのトリプルオプションを得意とする。1stDown 10ydsでは中央のランを選択するが、DL陣が山のように立ちはだかりわずかに1yd前進。2ndDown 9ydsではRBへのピッチがそれて大きくロス。3rdDown 16ydsの中央突破には、DL#33岡本祐貴が激しくタックル。これがファンブルを誘い、DB#29吉村隆之がリカバーして攻撃権を奪取。

 敵陣27yds という絶好のチャンスを得た攻撃陣。ファーストシリーズでOLが追手門DLを圧倒していたので、確実なランプレーのみで良いだろう。RB#21大上祥平のオフタックルプレー、QB#88佐々木のキーププレーなどで前進を重ねてゴール前2yds。RB#35田嶋が球を大事に抱えて突進してタッチダウン、待望の先制点を挙げる。(7-0)

 その後は京大の一方的な展開となった。攻撃ではライン戦で追手門大を圧倒。OLが3yds以上もDLを押し戻しているから、RBがスイスイ走れる。さらにWRが京大らしい低いブロックでDBを圧倒して、何度もロングゲインをアシスト。

 守備陣もDLの突進力がすばらしく、RBの走路をふさいでいる。中でも#96植村佳史は1回生ながら抜群の存在感でナイスタックルを連発していた。LBやDBの寄りが早く、ボールキャリアーに対してすぐさま、二の矢、三の矢が襲い掛かるという状況。LB#44添島直希はOLを浴びせ倒してなお腕を差し伸べてQBの脚を払っていた。追手門大はトリプルオプションからのQBキープを多用するのだが、そのたびに痛そうなタックルを浴びせられていて、QBをもっと大事にしたら?」と思った。

 スペシャルチームも素晴らしい。キックオフラッシュでは、DB#11名智が一直線にリターナーに襲い掛かる場面がしばしば。痛そうなタックルで何度も仕留めていた。

 前半に上げた4本のタッチダウンは全てRB 田嶋のランプレーによる得点。怪我に泣いたレギュラーシーズンのうっぷんを晴らすかの様に、前へ前へと進み続けた。結局、前半はランプレーのみで299ydsを獲得。喪失ydsは、わずか45yds。前半で勝負は決した。

 第3Qも京大はランプレーで着実に前進。ゴール前6ydsからQB佐々木がキープしタッチダウン(35-0)、さらに大塚が41ydsのFGを決めて追加点を挙げる(38-0)。

初めてのパスプレーは第3Q終了間際。ファンブルリカバーで得たチャンスに、QB#17林田がRB田嶋にハンドオフ。それを再び林田にヒッチしてWR#82白根滉へのロングパスを投じる。DBとの競り合いとなったが惜しくもキャッチならず。3rdDown 7ydsでもWR#83山本(睦)へのアクロスパスを投じるが、わずかにオーバースロー。完全にフリーとなっていたので、この失敗はいただけない。

 第4Qに入っても、攻守にわたり京大が主導権を握り、WR#8大工へのスクリーンパスでタッチダウン(45-0)、さらにWR#20向川へのロングパスでタッチダウンして52点を獲得した。京大はランだけで400yds獲得、喪失ydsはわずかに合計80ydsと圧勝した。

 快晴の王子スタジアムには開門前から長蛇の列ができ、試合開始になってもチケットブースが大混雑で入れない観客が大勢いた。入替戦としては異例の4500人もの観客が集まり、報道陣も80名以上が取材に訪れる注目の試合となった。

 春の交流戦で追手門大との試合を観戦したが、そのプレースタイルは「往年の京大のようだ」と感じた。低いタックル。どこまでも押し続けるしつこいブロック。ランプレーではWRでさえ泥臭いブロックをして、笛が鳴るまで足を動かし続ける。

 今秋の京大は、リーグ戦序盤でミスを連発して自滅した。後半戦では、関学との対戦で第3Q序盤までは互角の戦いをした。痛そうなタックルを散見できたので、敗れたとはいえ光明が見えた試合だった。最終の関大戦は残り50秒で勝利を逃し、改めてフットボールの怖さを再認識させられた。

 こうしたプロセスを経ての入替戦出場だったが、西村監督を始め、現役諸君、そしてOBにも色々な想いがあった。入替戦出場が決まってからの2週間、若手OBが毎日農学部グランドに足を運び、練習相手になったと聞く。入替戦当日は中京、関東といった国内はおろか、中国や米国からもOBが応援に駆け付けた。王子スタジアムのメインスタンドは、さながらOB、父母会、G.G.C.の同窓会の様相を呈していた。

 今年はGangstersが大きく改革へと舵を切った初年度で、象徴的なのは1回生の選手登録方針だ。従来は、1回生アスリートは未経験者であっても公式戦に出場していた。しかし強豪校アスリートとの体格差ははなはだしく、試合中のケガが散発していた。こうした実情を鑑み、今年から原則的に1回生は選手登録せず、大事に育てていく方針を採った。

 これはハード面の改革だが、ソフト面での改革として「選手が主体的に考えるチーム作り」が挙げられる。改革には痛みを伴うものだが、「創部初の入替戦出場」という苦境を経たからこそ、理想に近づけるのだと思う。

 試合前の西村監督は「僕たちのフットボールはこれでいいのですよね?と水野さんに問うような試合をしたい」と語っていた。一緒に観戦したファンの方は「今の時代に西村監督の方針は正しいと思う。改革に試行錯誤はつきもので、色んな声が聞こえてくるかも知れないが、来期以降も信念を貫いてほしい」とおっしゃっていた。

 水野さんは、試合後のインタビューで「挑戦をやめるなよ」と西村監督を激励したと聞く。この入替戦が、Gangsters復活のスタートとなることを期待しているのは、私だけでなく、Gangstersを取り巻く多くの方々に共通する気持ちだと思う。

 既に2015年度のシーズンは始まっている。どんな姿でフィールドに現れるのか楽しみだ。